人的資本とは?金融資本の相関を考えた資産配分

人的資産

 

株式投資で資産運用を始めたい、と真面目に考える方が最近多くなってきましたね。日本の財政も不安で年金ももらえるかどうかわからないし、会社の景気も良くないし、一方で家の購入や、子供の教育資金や、さらに新車や海外旅行など、ボーナスは増えなくても資金需要は増えるばかりです。

 

株を始めて投資スキルを徐々に習得すれば、この不安から逃れることができそうですよね。確かに資産運用のスキルを学ぶことでが将来の不安は和らぎます。しかし現実問題として、どのくらいの資金を株投資に回すべきか、銀行の定期においておいた方がいいのか、その資産配分を誰も教えてくれません。

 

今回の投稿では、明確にどうすればいいのか、それをやさしくご説明します。株投資ではリスクを取らなくては儲けることができません。しかしリスクを取りすぎると破産して人生ゲームオーバーです。

 

その微妙なバランスをどうすればいいのか? それに対する答えは、人的資本と金融資本の相関を考える必要があります。人的資本の意味、収益率、資産配分など、資産運用のキモの部分ですので、少し長いご説明になりますが、しっかり学んでくださいね^^

 

 

自分の労働力=人的資本は立派な資産

みなさんは毎月いくらくらいの収入がありますか? 人によってはフリーランスで収入は不安定だ、という人も、派遣や零細企業で半年後には収入があるかどうかわからない、という人もいるかもしれません。一方で大企業の正社員や公務員で定年まで安定したお給料があるはず、って人も多そうです。

 

今仮に、「年収が400万円手取りである」、と想定します。もしこの労働収入を金融資産で賄うとするといくらくらいの資産が必要だと思いますか?

 

ちなみに定期預金の利率は現在0.01%なので、400万円÷0.01% = 400億円となります。もしあなたが400億円を持っていてこれを銀行に預けると年間の利息が400万円になる計算です(源泉税は無視しました。実際は20.315%かかります)。しかし0.01%という数字は小さすぎてよくわかりません。以前の銀行利息はもっとあったはずだし、金融商品で3%くらいで回るものもありそうです。

 

なら、収益率5%と仮定してあなたの労働力の資産価値を計算してみましょう。
400万円÷0.05=8000万円

 

なんとなく現実的な数字が見えてきました。ちなみにこの「5%」は株式市場でのリスクプレミアム相当です(株で儲けられる無リスク金利を超過した期待収益率の意味)。

 

要するに年収400万円稼いでいるあなた(日本人の平均的な年収がこのくらいです)の労働力は、利回り5%(割引率5%)を前提とすれば、8000万円の「人的資本を持っている」ということができます。

 

≪人的資本とは?≫
人的資本とは、稼ぐ力のこと。具体的には、毎年の予想される収入を現在価値に置き換えたもの。このあなたが持っている「8000万円の人的資本を金融市場ではなく労働市場に投入して、年400万円の利回りを得ている」わけです。

 

 

毎年減っていくあなたの人的資本

ではこの「稼ぐ力」とも言える人的資本は毎年不変でしょうか? あるいは増加、減少していくのでしょうか?

 

人は永遠に400万円を毎年稼げるはずがないですよね? 普通は25歳くらいで働き始め、65歳には働けなくなってしまいます。その間、約40年間しかこの人的資本はないことになります。

 

実は年収400万円を5%で割った数字の8000万円は、「永遠に人的資本がある」ことを前提とした計算です。実際は毎年毎年この人的資本は減少し、64歳(定年を65歳として、その1年前)には400万円が残り、65歳になると人的資本はゼロになってしまいます。

 

それに定年までお給料が400万円の固定ということはありえません。経験が増えるとお給料はどんどん上昇し、そして定年が近くなると役職も外れ、収入が減っていくのが普通です。

 

 

金融資本はその逆に増える

あなたはもう一つの資産(資本)を持っているはずです。これを「金融資本(金融資産)」といいます。つまりお給料を貯めた銀行預金だったりそれを株に投資した株の価値だったりです。

 

新卒である会社に入社したと仮定します。この時、あなたの金融資本はゼロですよね?(学生時代のアルバイトやお小遣いはここでは無視します)。最初のお給料日まで銀行口座の残高はゼロですから。

 

それに対してあなたの「人的資本」は人生のなかで最大であるはずです。これから40年間働くことになるわけなので、将来もらえるお給料を現在の価値に換算した合計金額は大きいはずです。

 

いわゆる「生涯賃金」という概念だと、平均年収400万円が40年間続くと仮定して1億6000万円がそれに相当します。しかし実際の「人的資本」は将来の不確実性の分だけ安くなります。大企業の正社員でも20年後、30年後に同じ会社で同じ条件で働いているとは限りませんから。実際にあなたの人的資本は、専門的な計算をすると、4000万円弱になる計算です。

 

(注) 専門的な計算ですが、割引率10%、40年間、毎年400万円手取り固定、の現在価値は、金融関数電卓で計算すると、約3911万円となります。

 

つまり新卒者の持つ資産は:
人的資本 4000万円
金融資本 0万円

 

です。そして毎年毎年人的資本が減少し、生活費を払った残りが金融資本として積み重なっていきます。

 

 

人的資本は毎年減り、それを貯蓄した金融資本は毎年増える

もし仮に手取り年収400万円のうち毎年50万円を40年間貯蓄に回し、これを年利回り5%で株式などで運用していったら、40年後、あなたの金融資本はいくらになるのでしょうか?

 

答えは6,040万円です。
(注)毎年50万円、利回り5%、40年間で、将来価値を金融関数電卓で計算。

 

定年65歳のときの資産は:
人的資本 0万円
金融資本 6,000万円

 

どうでしょうか? 新卒で4000万円の「稼ぐ能力」は、40年後には具体的な金融資産6000万円になりました。老後の不安を払拭するためにも、この金融資本をできるだけ蓄えたいですよね?

 

(注)退職金は無視しています。年金もここでは無視しています。退職金や年金は「給料の後払い」なので人的資本に入れてもいいですが、金融資本に入れるのが一般的です。

 

 

生きることは、人的資本を回し、それを金融資本に変換する行為

預金がゼロでもまだ株投資をしていない初心者の方も、「資産はゼロ」と嘆く必要はありません。あなたが若く、安定して働ける限り、「人的資本」という名の立派な資産をたくさん保有しているからです。

 

そして、年5%で安定した運用ができれば、それなりに老後の蓄えを築けるはずです。金融的には、生きることは、働いた報酬の一部を株などの金融商品に投入して、金融資本を積み上げ、老後働けなくなったらそれを取り崩す行為です。

 

資金に余裕があったら孫の学費や家族での海外旅行にもスポンサーとして参加できますからね (^^) それに老後本当に動けなくなったらケアホームに入ったり、介護費用もバカになりません。(- -;)

 

「死ぬまで働けば蓄えなんてほとんどいらない」と言う人も世の中にはいるようですが、人間も生き物である以上、体はどんどん老化していきます。70歳とか80歳であなたは30歳のころと同じような仕事ができる、なんてまさか思わないですよね?

 

 

若い人ほど投資のリスクが取れるので株を買おう!

ここで投資成果の9割を決めてしまう資産配分(アセットアロケーション)の話をあなたの年齢に応用してみましましょう。
>投資はアセットアロケーションが9割!

 

株はリスクがありますが、その分だけ収益率(儲け)が優れた金融商品です。一方で国債や銀行の定期預金はリスクがほとんどないリスクフリーアセット(無リスク資産)ですが、当然利回りがほとんどありません。要はこの2つの資産の比率を何対何にするかで投資ポートフォリオのリスクが管理できるのです。

 

ここで投資家の年齢(資産運用できる年数)と稼ぐ能力(人的資本の大きさ)を考慮に入れないといけないことに気がつきませんか?

 

・若い人ほど稼ぐ能力=人的資本を持っている
・若い人ほど長い年月資産運用ができる

 

実は若い人ほど株投資に有利なんです!

 

逆に
・年配者ほど稼ぐ能力がなくなり、逆に金融資本を持っている
・年配者ほど資産運用に残された時間は少なくなる

 

つまり、若い人ほど、そして稼ぐ能力が安定している人(大企業の正社員や公務員など)ほど、リスクを取っても大丈夫なのです。なぜなら株式投資で失敗しても、日々のお給料もボーナスも安定して定年まで入ってくるので、へちゃら、というわけです。

 

・若い人ほど株式の資産配分(アセットアロケーション)を高められる
・仕事が安定している人ほど株式の比率を高められる

 

株のアロケーション(資産配分)を高めると、大きな儲け(期待収益)が得られます。もちろん大損もしやすいのですが、株で大損しても人生終わりません。

 

逆に、若くても仕事がフリーランスや派遣、潰れそうな零細企業だと自分の持つ「人的資本」の額が小さい特徴があります。そのような人は株式の比率を気持ち少なくします。

 

 

資産配分として、何パーセントの株の比率がおすすめなのか?

ここで具体的に何パーセントを株に、そして残りの何パーセントを無リスクの国債や定期にすべきなのか?をご説明したいと思います。

 

それは、
「自分の年齢%だけ無リスク資産を持つ。残りは株などのリスク資産」、という資産運用業界の経験則です。

 

要は、30歳の投資家は、「定期預金が30%、株の比率が70%」、です。また60歳になったら株を40%まで落として定期や国債を60%にしましょう、ということですね。

 

そしてさらに投資家さんの仕事の安定度合いも考慮に入れ調整します。たとえば、30歳の投資家で公務員であれば株の比率を標準より10%ポイント高めて80%にしてみる。逆にフリーランスで働いている人は、株を10%低めて60%の配分にする、といった具合です。

 

 

人的資本の安定度に応じて、資産配分をプラス/マイナス調整する

(仕事が安定している人は株の比率を気持多めに、不安定な人は少なめに)

 

ここで、28歳なら銀行の定期預金が28%で株が残り72%なのか?という疑問に対しては、そこまで細かく考えなくても大丈夫、とお答えします。この「年齢の比率で無リスク資産を持つ」手法には理論的な根拠がありません。

 

だいたいこんな感じで年齢とともに株式の比率を減らしていけば、リスクに対する対応ができるはず、といった経験則から導き出されたものであるからです。要は100歳になったら定期預金100%でいいんじゃない?ってことですね。

 

(注)相続税はここの議論では無視しています。実際は不動産にかかる相続税は金融資産にかかる税より低いので(不動産は課税評価額が市場価値より低くなるため)、相続を考えると不動産へ資産を置き換えるのもアリかもしれません。

 

また仕事の安定度に応じたパーセンテージのプラス・マイナスも大雑把な感触で大丈夫です。株投資になれてもう少しリスクを取りたかったら株を増やす、リスクは性格的に嫌であれば株の資産配分を減らす、くらいの感覚でうまく機能するはずです。

 

・年齢分だけ定期預金か国債:40歳台なら4割が定期預金
・100マイナス年齢分だけ株や他のリスク資産を買う:40歳台なら6割が株
・大企業の正社員や公務員はリスクを取れるので、株の比率を高める
・フリーランスや非正規雇用は未来が不安定なので、株の比率を下げる

(注)理論的には無リスク資産は、国債(日本国国債)です。この場合、個人投資家は10年物の個人向け国債(変動金利)をおすすめします。しかし国債の金利は、銀行の定期預金の利率と大差ないです(どっちもゼロに等しい。経費削減=飲みに行く回数を減らしたほうがはるかにマシ・笑)。

 

 

人的資本からの収益率(利回り)を向上させる方法とは

若い人は人的資本をとても多く持っています。逆に金融資本は少ないです。ここで素朴な疑問が生じます。それは、たくさん持っている人的資本をうまく活用した方が効率いいんじゃないの?ってことです。そうです。あなたの観察は正しいです。

 

つまり、より若い人は、少ない金融資本を売ったり買ったりあくせくトレードするより、自分の稼ぐ力を向上する職業スキルの取得に投資したほうがはるかに効率よく資産運用ができます。

 

具体的には、より上位の高等教育を受けたり職業トレーニングや専門資格の取得、そして何よりも安定して稼げる職業や会社に正規職員として新卒入社する、などの方法ですね。大学で真面目に勉強し、新卒でそのような会社に入社したり、公務員として働き出せれば、人的資本は最大になります。

 

 

経費削減も資産運用では大切

そしてもうひとつとても大切なことがあります。それは自分自身の「将来の負債」を削減することです。バランスシート上で右側が負債(借金)と自己資本(自分のお金)ですよね。人的資本と金融資本の合計を「資産」と考えると(左側)、負債は、自分が将来使う経費を現在のお金に置き換えたものになります。

 

この将来使う予定のお金は、具体的には、住宅、車、飲食、服、旅行、教育、医療、公共料金、などなどさまざまあります。この負債の部分を少なくすれば、資産(人的資本と金融資本の合計)は小さくても大丈夫な計算です。この将来予想される経費を削減するために注意することはあるのでしょうか?

 

・健康的な生活習慣や食事を送れば、老後の医療費が削減できる
・分不相応な家に住んだり豪華過ぎる車を買わない
・衝動買いや使い捨ての習慣を身につけない。モノは大切に長く使う

 

結局、バフェットを始めとする世界の大富豪が自ら実践している質素な生活習慣そのものです。
>資金を簡単に作る方法

 

 

人的資本と金融資本の相関を考えた資産配分 まとめ

先生

自分の稼ぐ能力は資本と見なされ、それを人的資本と呼びます。人的資本を回してお給料=利回りを得て、これを実際の金融資産(金融費本)に置き換えて人は生きています。

 

この人的資本と、金融資本との資産配分や収益率を考えないと資産運用はうまくいきません。若い人は人的資本を多く持っているので、、株式などリスクの大きい資産に多めに資産配分する(投資する)ことが適切です。また人的資本の収益率を高めるために、専門分野の勉強を通じて「自分に投資する」こともとても有益です。

 

一方定年間近などの年配者は人的資本が少ないので、株式へのアセットアロケーション(資産配分)を低めなければいけません。間違っても退職金全額を株に投資しないでくださいね^^

 

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